コノテガシワ(児手柏、側柏)

コノテガシワは中国原産のヒノキ科の高木で、 開成山公園では音楽堂の外周に列状に植えられています。また、園芸品種である 「センジュ (千手)」や「エレガンテシマ」などは庭園木としてよく目にします。
中国ではこの木を「側柏 (中国語読み:ツァバイ)」と言いますが、 「百木の長」と尊称され、王侯貴族の墓所に必ず植え、正月には小枝を長寿・幸福・繁栄の象徴として飾ったそうです。また、内皮・葉・種実は薬用として用いられています。
なお、中国では「柏」の文字は専ら「ヒノキ科」の樹木に用いる文字で、 扁柏 (ヒノキ)、花柏(サワラ)、圓柏(イブキ)、 羅漢柏 (アスナロ) 等に使われています。そくはく側柏が日本に渡来したのは元文年間(1736~41年)と言われていますが、和名としてコノテガシワ、漢字で書くと「児手柏」と付けられました。 しかしながら「児手柏」の名は既に万葉集に二首ほど見られます。
① 奈良山乃 兒手柏之 雨面 左毛右毛 俊人之友ないじん
《 読み : 奈良山の児手柏の両面にかにもかくにも人の伴〉
② 知波乃奴乃 古乃弖加之波能 保々麻例等 阿夜示加奈之美 於枳弖他加枳奴
《読み : 千葉の野のこのてがしわのほほまれどあやに愛しみ置きて誰が来ぬ >
この万葉集のコノテガシワの表記には児手柏と古乃弖加之波の二通りがありますが、これらは何れも「ブナ科のナラやカシワの葉の若芽」を指しているとの説が有力です。また、この頃から日本では 「柏」をカシワを表す文字として用いるようになっていたようです。
ところで、「側柏」の葉の特徴は「葉が垂直で子どもが相手を打っているように見え、おまけに葉の裏表がハッキリしない」ことにあります。江戸時代、この木を見た人は側柏の「柏」と、万葉集の「見手柏の両面」から、何の抵抗もなく和名としてこの木を「コノテガシワ」と命名したのではないでしょうか。


